片頭痛予防の新しい注射薬「アイモビーグ」はじめました💉

片頭痛予防の新しい注射薬「アイモビーグ」はじめました💉

2021/9/8(水)

 みなさん、おはようございます。オリンピック・パラリンピックともに終わりましたね。パラリンピックの開会式や閉会式も、多様性に溢れていて、とても感動しました。恥ずかしながら、今回のパラリンピックで初めて「ボッチャ」や「ゴールボール」という競技を知りました。

改めて、ソメイティのピンバッジでパラリンピックの全種目をながめてみました。

 そういえば、オリンピックの「メダリスト公式フレーム切手」が届いたので、嬉しくて、並べて写真を撮りました。実は、僕は追加で発売される度に1枚1枚郵便局のサイトから注文していたのですが、大会が終わったあと、「全種類セット」というのが発売されて、少し悲しかったです。もう少し待てばよかったです。パラリンピックのメダリストの切手は、全種類セットが昨日発売になったので、こちらも楽しみです

 さて、切手の話になるとつい盛り上がってしまいますが、今日は、注射タイプの片頭痛予防薬のお話です。前にブログで紹介したエムガルティに続き、片頭痛予防の注射薬「アイモビーグ」がこの8月、日本でも発売されました。アイモビーグは、エムガルティと基本的には同様に、月4回以上の片頭痛発作があり、予防薬を使っていても、日常生活に支障をきたすような頭痛が頻発する患者さんが対象となります。世界では最初に発売(2018年5月にアメリカで承認されて以降、世界の71の国や地域で承認されています)されたCGRP製剤なので、5年間の長期投与試験でも安全性が確認されています。

 いきなり聞くと、「CGRPって何」って思いますよね。エムガルティのブログで少し紹介したのですが、CGRP(シージーアールピー)とは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide)の略称で、片頭痛の発作に関与するとされる神経ペプチドです。正式名称を思い浮かべると、略称も覚えやすいですよね。

 外部からの光や音、匂いといったなんらかの刺激によって、脳神経の一つである三叉神経の末端からCGRPが放出されます。CGRPが、その受け皿であるCGRP受容体に結合すると、脳の血管を拡張させて炎症を引き起こし、片頭痛が起こると言われています。この、CGRPを受け取るCGRP受容体というのは、脳の中に広く分布しているんです。前に紹介したエムガルティは、エムガルティ自身がCGRPに直接くっついて、CGRPがCGRP受容体に結合するのを阻害するお薬でした。

今回のアイモビーグは、CGRP受容体の方にアイモビーグ自身がくっついて蓋をして、CGRPがCGRP受容体に結合するのを阻害するお薬なので、役割が違うんですね。

 あと、使う本数の違いがあって、エムガルティは初回に2本注射しますが、アイモビーグは初回に1本ですみます。その後は、4週間単位で1本を注射して、12週間したらお薬が有効かどうかの判断をして、その後も継続するかどうか患者さんと相談して決めていきます。

 片頭痛発作の回数が減り、発作の時に飲む頭痛薬を減らす効果が認められていて、お薬を使い始めて1年後には、64.5%の患者さんが片頭痛の日数が半減したという結果が出ています。ただ、健康保険適応でも、3割負担の方で1本約12,500円と高額なお薬なので、あらかじめ知っておいていただけると幸いです。アイモビーグも、エムガルティと同様にご予約をいただいて注射することになりますので、外来にて僕にご相談ください。(当日も、冷蔵保存している注射薬を常温に戻す必要があるんです。)

 また、注意が必要なのは、対象となるのが片頭痛が1ヶ月に4日以上起こり、飲み薬の予防薬による治療が有効でないと判断された患者さんなので、現在、片頭痛があって辛い方でも、まだ飲み薬の予防薬を飲まれたことがない方には、まずは飲み薬を処方します。

 実は、今日のお昼に「アジョビ」という3つ目の片頭痛予防の注射薬の勉強会も行います。(またご報告しますが、アジョビは、4週間ごとに1本注射するか、12週間ごとに3本注射するか、患者さんのライフスタイルによって選べる特徴があります。忙しくて4週間ごとの来院が難しかったり、ご自宅がクリニックまで遠い方には合っていると思います。)

 4月に発売されてから、日本で唯一の片頭痛予防の注射薬だったエムガルティに続き、8月にアイモビーグ、アジョビが発売され、患者さんの状況により、どれを使うか選択できるようになりました。当クリニックでは3種類すべて扱っていますので、外来で患者さんと相談しながら、その方にあったお薬を選んで使っていきますね。

 片頭痛は、経験のある方にしかわからない辛さで仕事や日常生活を脅かします。頻繁に片頭痛の発作に苦しんでおられる方は、ぜひ、片頭痛の予防療法を始めませんか。まだ、飲み薬の予防薬を試したことがない方も、ぜひ、ご相談ください。

 それでは、今日も一日、がんばりましょう。