眼瞼けいれん・顔面けいれん

眼瞼けいれん

概念

眼瞼けいれん(眼瞼れんしゅく)とは、持続性・反復性のれんしゅくが両側の眼輪筋に意図せずに繰り返し出現し、そのためにまぶたがれんしゅくする病態です。眼瞼けいれんは、局所性ジストニアに分類され、他のジストニアと同じように大脳基底核を含む運動制御システムに機能障害をきたすことで生じると考えられています。40~60歳代の中高齢者で発症率が高く、女性にやや多くみられる傾向にあります。

症状

初期症状としては、まぶたの違和感・不快感、まぶしさや頻回なまばたきなどがあります。これらの初期症状はドライアイなどの眼疾患と鑑別がつきにくい場合もあります。症状が進行すると、まぶたが頻繁にれんしゅくし、さらに進行すると意図的に目を開けることができなくなります。症状は通常、両側対称性ですが、軽度の左右差がみられることも少なくありません。

診断

眼瞼けいれんの診断は、一般的に問診・視診により行われます。

鑑別診断

眼瞼けいれんと鑑別すべき疾患には、片側顔面けいれん、眼部ミオキミア、チック、開瞼失行、眼瞼下垂などがあります。眼瞼下垂は重力または上眼瞼挙筋の麻痺によって上まぶたが下がった状態で、ボツリヌス治療により悪化する可能性が高いので注意が必要です。

重症度分類

眼瞼けいれんの診断および治療の指標として、その重症度と頻度を5段階に分けた”Jankovic分類”がよく用いられます。

重篤度スコア

0: けいれんを全く認めない(正常)

1: 光・風・振動などの外部刺激によってのみけいれんが誘発される

2: 軽度なけいれんを認める

3: けいれんを認め、他の顔面筋との差異がわかる

4: 他の顔面筋のけいれんを伴う激しい眼瞼けいれんを認める

頻度スコア

0: けいれんを全く認めない(正常)

1: 通常よりまばたきが多い(20回/日以上の頻度)

2: まばたきが著しく増加し、1秒程度の持続する軽微なけいれんを認める

3: 1秒以上の持続するけいれんが認められ、日常生活に支障をきたしているが、50%は眼を開けている

4: けいれんによって、ほとんど眼が閉じた状態のため、機能的には眼が見えない状態となっていて読書やテレビをみることができない

まぶたの動きに関与する筋肉

眼瞼けいれんの病態に関与する重要な筋肉はまぶた周辺にある眼輪筋です。眼を閉じる運動では上まぶたの下向きの動きが主であり、下まぶたの引き上げの動きは小さいので、ボトックスの投与は上まぶたの眼輪筋への投与が中心になります。上まぶたの中央部にある上眼瞼挙筋は上まぶたを挙げる動きに関与しているので、この部位にボトックスが浸潤すると眼瞼下垂(上まぶたが下がる)を来たす可能性があるため、投与の際には注意が必要です。

片側(へんそく)顔面けいれん

概念

顔面けいれん(顔面れんしゅく)とは、顔面神経の被刺激性亢進により、顔面筋が発作性・反復性かつ意図せずにれんしゅくする病態です。顔面神経が脳幹から出る部分で、延長・蛇行した脳動脈によって圧迫され、その拍動により起こることが多いと考えられています。片側顔面けいれんは眼瞼けいれんと同様に、40~60歳代の中高齢者で発症率が高く、女性に多くみられます。

症状

通常は、れんしゅくは下まぶた、または上まぶたに始まります。初期には眼輪筋のみに限局することが多いのですが、進行すると眼輪筋の他部位や口輪筋など他の顔面筋に広がります。通常、不規則・反復性ですが、重症例では持続性になります。ほとんどは片側性ですが、まれに両側性もあります。

診断

片側顔面けいれんの原因となる器質的病変の有無を調べることが重要です。神経学的診察・脳CT・MRIなどを用いて脳内および脳血管などの精査を行います。

鑑別診断

片側顔面けいれんと鑑別すべき疾患には、眼瞼けいれん、眼部ミオキミア、チックなどがあります。