熱中症

熱中症の治療

 当クリニックでは、身体の冷却とともに熱中症の症状に応じて、疲労回復・栄養補給のためビタミンB群の点滴を行っております。とくにビタミンB1は「にんにく注射」といわれており効果は絶大です。熱中症かなと思ったら、重症化する前にご来院下さい。

熱中症とは

 気温の高い環境にいることで体温を調節する機能が狂ったり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたりすることで起こる、倦怠感や吐き気、めまいや頭痛、けいれん、意識障害などの症状をまとめて「熱中症」といいます。

要因

 熱中症を引き起こす要因には、「環境」によるものと「からだ」によるものがあります。「環境」と「からだ」の要因が重なったときに熱中症が起こりやすくなります。

 環境の要因としては、気温や湿度が高い・風がない・日差しが強いなどです。
からだの要因としては、疲れや寝不足で体調がよくない・激しい運動などです。注意が必要な時期は、梅雨の晴れ間や梅雨が明けてすぐ、しばらく涼しい日が続いた後、急激に暑くなった日などです。

 注意が必要な場所は、運動場、公園、海やプールなど強い日差しが当たる屋外や、車の中、体育館、気密性の高いビルやマンションの最上階などです。浴室やトイレ、寝室など、家のなかの風通しの悪い室内でも起こりやすくなります。

症状

 熱中症は、軽い症状から命にかかわる重症なものまで、段階的にいくつかの症状がみられます。暑い環境に長くいると、体温調節機能が乱れて体外への熱の放出ができなくなり、体内に熱がこもって体温が上昇します。また、急激に大量の汗をかくと、体内の水分と塩分が失われ、体液のバランスが崩れてしまいます。それが筋肉や血流、神経などからだのさまざまな部分に影響をおよぼすと、けいれんやめまい、失神、頭痛、吐き気といった熱中症の症状があらわれるのです。

 さらに症状が進むと、40度以上の高熱、意識障害、けいれん、異常行動などを起こすことがあり、この状態を「熱射病」といいます。脳内の温度が上昇することで中枢神経に異常が起こり、からだのさまざまな臓器に障害が出て、命を落とすこともある危険な状態になります。

 熱中症になっても、軽症のうちは体温が高くならないこともありますので、「熱が高くないから大丈夫」と思い込むのは危険です。最初は軽症でも、放置するとあっという間に重症化することもあるため、油断は禁物です。

高齢者・乳幼児・持病のある方は要注意

 高齢者や乳幼児は、体温調節機能の衰えや未熟さによって体内に熱がこもりやすい(体温が上がりやすい)上、暑さを自覚しにくいこともあるため、リスクが高いといえます。子どもは身長が低く地面に近い分、アスファルトの照り返しなどによる熱の影響を受けやすくなることも要因のひとつです。

 また、心臓病、糖尿病、高血圧、腎臓病、精神神経疾患、皮膚疾患などの持病も、体温調節機能の乱れの原因となることがあります。病気の治療のために薬を服用している場合も、薬の種類によって発汗の抑制や利尿作用があるものがあり、熱中症の原因になることがあります。

対策

 夏は室内外問わず、熱中症への注意が必要です。立ちくらみ、めまい、筋肉のけいれん、倦怠感、脱力感など熱中症を疑う症状がみられたら、まずは風通しのよい日陰やエアコンのきいた室内に移動します。すぐに冷たい水や塩水、スポーツドリンクなどを飲み、横になってからだを休めましょう。衣類の襟元をゆるめたり、脱いだりして、うちわや扇風機で風をあてたり、氷や氷嚢でからだを冷やしてもいいでしょう。冷やす場合は、首筋やわきの下、足の付け根、足首など動脈が通っている部分を冷やすのが効果的です。

 熱中症は重症化すると命に関わることがありますので、激しい頭痛や高熱など症状が重いときは迷わず医療機関を受診してください。熱中症は症状に応じて素早く適切な処置を行うことが大切です。

 熱中症になったら、体力回復のために栄養補給することも大切です。栄養素からエネルギーを産み出す代謝の助けになるのは、ビタミンB1やB2、B6などのビタミンB群です。なかでもエネルギー源となる炭水化物の分解・吸収に欠かせないビタミンB1は、食事のほか、栄養ドリンクなどで補給してもいいでしょう。

セルフケア

 熱中症のセルフケアとしては、十分な睡眠や休養、栄養をとり、体力の回復に心がけることが重要です。毎日の生活のなかで、涼しく過ごす工夫やこまめな水分補給を心がけ、暑さに負けない健康なからだづくりをしておくことも大切です。

 エアコンの温度設定をしていても、センサーの場所や感度によって設定温度が正確ではないこともあります。室内の人数や行動、服装などにあわせて温度を設定しましょう。目安としては、28度を超えないように設定しておくと安心です。エアコン使用時は、冷風が直接人に当たらないように注意が必要です。

 脱水症状の初期には、のどの渇き、汗や尿の量が減る、尿の色が濃くなるなどの症状が現れますが、軽い脱水状態ではのどが渇かないこともあります。特に高齢者は脱水症状が進んでいても、のどの渇きを感じにくいことがあるため、飲みたいと思わなくても、外出や運動、入浴、睡眠などの前にこまめに水分をとることを心がけましょう。ただし、高齢者は水分のとりすぎによって心臓に負担がかかることもありので注意が必要です。

 飲むものは水、麦茶、塩水やスポーツ飲料などが良いです。カフェインを含むお茶やコーヒー、アルコールを含む酒類には利尿作用(おしっこをだす作用)があり、かえって脱水症状を進めてしまう危険もありますので注意が必要です。

 涼しく過ごすためには、汗を吸い、通気性のよい綿素材の衣類が適しています。吸汗素材、速乾素材のシャツや、軽く涼しいタイプのスーツなどもおすすめです。首回りがしめつけられると熱がこもってしまうため、襟元をゆるめて風を通しましょう。