パーキンソン病

パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、脳幹という頭の中心の深い場所にある中脳黒質という部分の神経細胞が次第に減少し、その神経が働くときに使うドパミンという物質が減ることによって生じる病気です。ドパミンは、運動のしくみを調整するような働きを担うため、ドパミンが減ることにより、体の動きが鈍くなったり、体の緊張が高くなったりします。パーキンソン病の多くは原因不明で、一部を除き遺伝することはありません。

人口10万人あたり100~150人の方が発症するといわれています。50~65歳に多く発症し、高齢になるにしたがい増加傾向にあります。
パーキンソン病は、お薬により症状はかなりよくなります。お薬でうまく治療していけば、今までと同様の生活をおくることが可能です。

当クリニックではパーキンソン病を疑った場合には、神経内科の専門医をご紹介申し上げます。

パーキンソン病の症状

症状の種類や程度、経過は患者さんによってかなり違いがあります。個々の症状に応じて対策がありますので、まずは神経内科医の診察をきちんと受けることをお勧めします。

主な運動症状

  • 手足がふるえる(振戦)
  • 動きが遅くなる(無動)
  • 筋肉が硬くなる(固縮)
  • 体のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)
  • 顔の表情の乏しさ、小声、小書字、屈曲姿勢、小股・突進歩行

主な非運動症状

  • 自律神経系症状:便秘(最も多い)・排尿障害(頻尿)・起立性低血圧
  • 睡眠障害:不眠・むずむず脚症候群・REM睡眠行動障害
  • 精神症状:抑うつ・不安・無関心・(幻覚、妄想)
  • 認知機能障害
  • 痛み、倦怠感

うつ症状は患者さんの約半数にみられるといわれており、患者さん自身や家族の方も気づかないことの多い症状です。認知症は病気の進行とともに増加します。非運動症状は、患者さんやご家族と医師との間に、綿密な意志疎通があって、はじめて気づかれる症状です。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

運動合併症

パーキンソン病の初期は、お薬が有効ですが、病気の進行とともに、薬が効かない時間が出てきたり (ウェアリング・オフ現象)、また、薬が効きすぎて意思に反して手足が動いたり(ジスキネジア)といった症状が現れます。これらを運動合併症といいます。

ウェアリング・オフ現象

パーキンソン病が進行すると、薬が効いている時間が短くなり、次のお薬を飲む前に効果が切れるウェアリング・オフ 現象など、1日のうちで薬の効くとき(オン)と効かないとき(オフ)がみられるようになります。

原因

L-ドパは脳にドパミンを補充するためのお薬ですが、内服後、短時間で血中から無くなってしまいます。パーキンソン病が進行すると、ドパミン神経が減少してドパミンを保存しにくくなります。そのため、L-ドパの効果が短くなり、次の薬を飲む前にパーキンソン症状があらわれてしまいます。

治療

L-ドパによるパーキンソン病初期からの治療に加えて、L-ドパの作用を長続きさせるCOMT阻害薬、MAO-B阻害薬、ゾニサミド、アデノシンA2A受容体拮抗薬などを併用します。アデノシンA2A受容体拮抗薬は、ドパミンとは異なる新しい作用機序によりウェアリング・オフ現象を改善します。

ジスキネジア

自分の意思に反して手足などが勝手に動く症状で、薬の濃度が高くなった時に出現します。症状の強さの程度はさまざまですが、気にならなければ対処する必要はありません。

原因

パーキンソン病が進行すると、ドパミン神経が減少し、ドパミン受容体の刺激が一定に行われなくなり、ドパミンを受ける側の神経の興奮の調節がうまくできなくなって、ジスキネジアが発現すると考えられています。

治療

動作の邪魔になるほど強いジスキネジアの場合、その原因となる薬剤の減量を行います。

パーキンソン病の診断手順

パーキンソン病かどうかの診断には、神経内科医の受診をお勧めします。

まず、患者さんから年齢、症状、経過、既往歴、内服薬などを伺います。次に似たような症状を現わすほかの病気と区別するため、脳MRIなどの画像検査を行います。

2014年1月からは、新しいSPECT検査が保険診療で実施できるようになりました。

MRI検査の画像

健康な人とパーキンソン病の人との区別がほとんどつきません

同じ時期のSPECT
(スペクト)検査の画像

パーキンソン病での脳内の変化(ドパミン神経の減少)がはっきりと確認できます。

パーキンソン病は、MRIやCTなどの画像検査では、健康な人との区別がつきません。
これに対し、新しいSPECT(スペクト)検査は、パーキンソン病の原因となるドパミン神経の減少が目で見てわかるので、早期診断、早期からの治療開始に役立ちます。

また、手足の震えなど、パーキンソン病に似た症状があらわれる別の病気もあります。
これらの病気とパーキンソン病では治療の内容が違うので、しっかり鑑別することが大切です。
これらの“鑑別診断”にもSPECT(スペクト)検査が有効です。

パーキンソン病に似た症状がみられる疾患

本態性振戦(ほんたいせいしんせん)

薬剤性パーキンソニズム

進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)

脳血管性パーキンソニズム

多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)

線条体黒質変性症

など

パーキンソン病の重症度

パーキンソン病の病気の進行度(重症度)を示す指標として「ホーン-ヤールの重症度分類(ヤールの重症度分類)」と「生活機能障害度」が用いられています。

パーキンソン病は通常身体の片側から症状が始まり、進行すると身体の両側に症状が広がります。「ヤールの重症度分類」では、このような症状の進行に沿って、ふるえなどの症状が片方の手足のみである場合をI度、両方の手足にみられる場合をII度、さらに病気が進行し、姿勢反射障害(体のバランスの障害)がみられるようになった場合をIII度、日常生活に部分的な介助が必要になった場合をIV度、車いすでの生活や寝たきりとなった場合をV度としています。

生活機能障害度は生活機能の障害度に応じて1~3度の3段階に分類されています。

ヤールIII度以上、生活機能障害度2度以上の場合は、特定疾患医療費補助制度が受けられます。

パーキンソン病の治療について

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パーキンソン病の治療

薬物治療

治療の中心は薬物治療であり、パーキンソン病と診断された場合、まず、薬物治療が開始されます。薬物治療によりパーキンソン病の症状がかなり軽快します。

パーキンソン病にはいろんなお薬があります。それぞれのお薬に特徴があり、患者さんの症状や年齢、活動度に応じて、薬の種類、服薬量、組み合わせを考えて処方します。パーキンソン病は、脳内のドパミンが不足して起こるため、それを補うL-ドパやドパミンの代わりに作用するドパミンアゴニストが治療薬の中心となります。

ただし、長期にわたる薬物治療の合併症として運動合併症(ウェアリング・オフ現象やジスキネジア)があげられます。運動合併症はL-ドパの効果の程度や持続に関連した症状で、L-ドパが大変有効であったことと背中あわせの症状ともいえます。

薬物治療を受けるときには医師が処方した通りにきちんと飲むことが大切です。自分の判断で、勝手にお薬を中止しないようにしましょう。

パーキンソン病の主なお薬

L-ドパ

L-ドパは、ドパミンの一つ手前の化合物で、パーキンソン病で不足しているドパミンを補うためのお薬です。ドパミンそのものは血液から脳に入るための関所(血液脳関門)を通過できないため、服薬しても効果を発揮しません。一方、L-ドパは、血液脳関門を通過して脳内のドパミン神経に取り込まれてドパミンに変わり、蓄えられ、神経から遊離されて症状を改善します。

ドパミンアゴニスト

ドパミンアゴニストは、ドパミン受容体に直接作用することにより、パーキンソン病で足りなくなったドパミンの作用を補い症状を改善します。

カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬

ドパミンの原料となる物質L-ドパを分解してしまう酵素「COMT」の働きを抑え、L-ドパを黒質に届けやすくします。

モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬

ドパミンを脳内で分解してしまう酵素「MAO-B」の働きを抑え、ドパミンの量が減らないようにします。

L-ドパ賦活薬

体内でドパミンが作られるのを促進したり、ドパミンの効果をなくしてしまう成分を排除することにより、脳内のドパミンを増やします。

アデノシンA2A受容体拮抗薬

アデノシンは、線条体の神経細胞に作用します。パーキンソン病では、ドパミンの作用が弱くなることにより、相対的にアデノシンの作用が強くなって神経が過剰に興奮し、運動機能が低下します。アデノシンA2A受容体拮抗薬は、神経細胞におけるアデノシンの作用を阻害することにより運動機能を改善します。

ノルアドレナリン補充薬

パーキンソン病では、ドパミンだけでなく、ノルアドレナリンも減少します。そのノルアドレナリンを補充する薬です。

ドパミン遊離促進薬

ドパミン神経からのドパミン分泌を促進します。線条体で一部グルタミン酸受容体の感受性を調節します。

抗コリン薬

抗コリン薬は、ドパミンの減少で相対的に作用が強まってしまったアセルチルコリンの働きを抑えます。

外科治療

外科治療は、お薬を長く服薬し、ウェアリング・オフ現象やジスキネジアがみられるようになった患者さんに対し、これらの症状の改善を目的に行われるもので、病気そのものを治す手術ではありません。お薬がよく効く患者さんが対象になります。

手術法としては、脳深部刺激療法(視床下核刺激術、淡蒼球刺激術、視床刺激術)と定位的破壊術(視床破壊術、淡蒼球破壊術)がありますが、現在は脳深部刺激療法、なかでも視床下核刺激術が主流になっています。

視床は主としてふるえに、淡蒼球はウェアリング・オフ現象やジスキネジアに、視床下核はウェアリング・オフ現象とジスキネジアの改善に寄与します。

リハビリテーション

パーキンソン病の患者さんは、意欲の低下や無動症状、姿勢反射障害のため同年齢の人に比べて運動不足になりやすく、体を動かさないために身体機能の低下が生じやすい病気です。そこで、身体の機能を維持回復させるために、毎日の生活にリハビリテーションを取り入れることが重要になります。リハビリテーションは、お薬が効いている時に、無理をせず、自分に合った運動から行い、徐々に回数を増やしていくことが勧められます。

暮らしの中の工夫・周囲のサポートが大切!

パーキンソン体操とは、体力の低下を防ぎ、筋肉や関節を柔らかくして動作を滑らかにするための運動です。

パーキンソン病は、病状の進行に伴い体を動かしにくくなり、日常生活が不便になります。しかし、食事、着替え、洗面など日常生活の場面において、ちょっとした工夫をすることでずいぶん生活が楽になります。

また、動きにくいから動かないと、より運動機能が低下しますので、家庭で楽に体を動かせるように手すりの設置や家具類の配置を調整することも大切です。転倒防止のため、患者さんがよく歩く場所へ物を置かないようにします。パーキンソン病はずっと付き合う病気ですので、自分の症状に合わせてより生活しやすいように工夫することが大切です。

公的支援制度

パーキンソン病には2種類の公的支援制度があります。医療費に関する支援制度と、介護・福祉に関する支援制度です。医療費に関する支援制度はヤールの重症度分類により異なり、III度以上(生活機能障害2度以上)、または月ごとの医療費総額が33,330円を超える月が年間3回以上ある場合は、難病医療費助成制度が受けられます。申請の方法など、詳しくは、最寄りの保健所にご相談ください。

パーキンソン病に関わる主な支援制度

2018年1月時点
パーキンソン病サポートネット:協和発酵キリン