10月28日(金)、降圧薬のオルメサルタン(オルメテック®)についての話を聞きました。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるアジルサルタンとオルメサルタンの効果を比べるCHAOS studyという臨床試験が行われ、その結果が報告されました(Ann Thorac Cardiovasc Surg 22: 161, 2016)。
対象は、心臓の手術を受けた後、安定していて、本態性高血圧(特定される原因がない高血圧のこと)のためにオルメサルタンを1年以上服用し、家庭血圧が140/90mmHg以下にコントロールされている患者さんです。対象の患者さんをランダムに2つのグループに分け、アジルサルタンとオルメサルタンを12ヶ月間投与した後、薬剤を入れ替え、さらに12か月間投与しました。試験を行っている間、早朝の家庭血圧が140/90mmHgを超えた場合は、別の降圧薬であるカルシウム拮抗薬が追加されました。
早朝家庭血圧の推移は以下の通りで、オルメサルタンとアジルサルタンで有意な差を認めませんでした。
ベースライン (n=60) | 投与後12か月(n=57) | P値 | ||
アジルサルタン | オルメサルタン | |||
収縮期血圧 (mmHg) | 126.3±0.8 | 127.3±1.3 | 128.6±1.2 | 0.454 |
拡張期血圧 (mmHg) | 69.3±0.8 | 69.3±1.1 | 69.8±1.3 | 0.743 |
投与後12か月の時点で、オルメサルタンのグループは、アジルサルタンのグループと比べて、血漿アンジオテンシンⅡ濃度、血漿アルドステロン濃度がより低く、心臓の重量が小さくなりました(以下の棒グラフ)。
オルメサルタンは、ACE2を増加させて、AngⅡ(1-8)[アンジオテンシンⅡ]→Ang-(1-7)を増やし、これがMas受容体に結合して、血圧低下、臓器保護作用を示すことが示唆されています(Am J Hypertens 28: 15, 2015、J Stroke Cerebrovasc Dis 24: 1487、2015)
まとめると、オルメサルタンは血漿アンジオテンシンⅡ、アルドステロン濃度を低下させ、心肥大を抑える効果があり、その機序の1つとして、ACE2に作用して、Ang-(1-7)を増加させることが推察される、ということです。