投稿日:2016年10月6日|カテゴリ:院長コラム

10月6日(木)、新規高コレステロール血症治療薬であるアリグロマブ(プラルエント®)についての説明を聞きました。

 

アリグロマブは、血中LDLコレステロール濃度の調節に関与するPCSK9に結合する抗体です。

肝臓の細胞の表面にあるLDL受容体は、血中のLDLを除去する働きを持っています。LDLはLDL受容体と結合し、肝細胞内に取り込まれます。その後、LDLとLDL受容体に分かれ、LDLは分解されますが、LDL受容体は肝細胞の表面に出て、再利用されます。

PCSK9は肝細胞が作る酵素の1つで、LDL受容体と結合すると、LDLの肝細胞内への取り込み時にLDLだけではなく、LDL受容体も分解されます。つまり、PCSK9があるとLDL受容体が少なくなるので、血中のLDLが取り込まれる量が減って、血中のLDLが増加します。

アリグロマブはPCSK9に結合し、失活させるため、PCSK9がLDL受容体に結合しなくなります。したがって、LDL受容体は分解されず増加するため、LDLの肝細胞への取り込みが多くなり、血中のLDLコレステロール値が低下します。

 

アリグロマブの投与対象患者さんは以下の通りです。

①家族性高コレステロール血症の患者さん

 成人(15歳以上)家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体診断基準

 1.高LDL-C血症(未治療時のLDL-C 180mg/dl以上)

 2.腱黄色腫(手背、肘、膝などの腱黄色腫あるいはアキレス腱肥厚[9mm以上])あるいは皮膚結節性黄色腫

 3.家族性高コレステロール血症あるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)

 ※2項目が当てはまる場合に、家族性高コレステロール血症と診断する。

②心血管イベントを発症するリスクが高い高コレステロール血症の患者さん

 冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病、慢性腎臓病等の罹患または既往歴がある。

さらに、スタチン製剤が投与されていて、患者個々の最大耐用量を用いても、効果が不十分である場合に限ります。

 

治療効果は、以下の通りです。

 アリグロマブ:141.1±2.2mg/dl(ベースライン)→53.4±1.9mg/dl(投与52週後)

 プラセボ(偽薬):141.6±3.1mg/dl(ベースライン)→135.6±2.8mg/dl(投与52週後) 

 ⇒だいたい80mg/dl低下します。

 

副作用で一番多いのは、注射部位反応です。これは注射した部位が赤くなったり、少し痛くなったり、腫れたりする反応の事です。

 

用法・用量:通常75mgを2週間に2回皮下注射します。効果不十分な場合には1回150mgに増量できます。

 

家族性高コレステロールヘテロ接合体患者は500人に1人以上、ホモ接合体患者は100万人に1人以上の頻度で認められ、わが国における家族性高コレステロール血症患者総数は、25万人以上と推定されています(日本動脈硬化学会ホームページより)。家族性高コレステロール血症は遺伝的背景のない高コレステロール血症に比べてLDL-Cが著しく高値で、動脈硬化の進展が早く、それによる臓器障害の程度も強いため、厳格なLDL-C低下治療が必要となります。今までの治療では効果不十分であった患者さんにアリグロマブを投与して、十分な効果を示すことが示されており、この薬剤による治療が期待されています。