投稿日:2016年2月14日|カテゴリ:院長コラム

2月2日(火)、エンパグリフロジン(ジャディアンス®)についてのお話を聞きました。

 

エンパグリフロジンはSGLT2阻害薬というタイプの糖尿病のお薬です。エンパグリフロジンは、2016年3月に投与期間制限が解除されます。

※SGLT2阻害薬:SGLTはsodium glucose cotransporterの略で、日本語ではナトリウム・グルコース共輸送体と呼ばれます。SGLTはナトリウムやグルコース(ブドウ糖)を細胞の内に取り込む働きを持っています。SGLTにはいくつかの種類がありますが、この中でSGLT2は腎臓の近位尿細管にあります。腎臓の糸球体で血液が濾過され、尿の元(原尿)ができますが、これには血液とほぼ同じ濃度のブドウ糖が含まれています。このブドウ糖は近位尿細管で再吸収されます。ここで大きな役割を果たしているのがSGLT2です。SGLT2阻害薬は、SGLT2の働きを阻害し、近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を減少させ、尿中へのブドウ糖の排泄を増加させます。その結果、血糖値が高い状態が改善されます。

 

エンパグリフロジンの心血管イベントへの影響を検討した臨床試験 (EMPA-REG OUTCOME) の結果がNew England Journal of Medicineという権威ある医学誌に発表されました (N Engl J Med 373: 2117-28, 2015)。心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者さんにエンパグリフロジンを標準的な治療に上乗せしたところ、以下の結果が得られました。

   心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死的脳卒中) 14%低下

   心血管死 38%低下

   心不全による入院 35%低下

   総死亡 32%低下

エンパグリフロジンが投与された群での、HbA1cの低下は 0.4-0.6%程度であり、この軽度の血糖値の改善が上記のようなリスクを減少させたとは考えづらく、SGLT2の利尿作用による体液量の減少が大きく関与したものと考えられています。

非致死性脳卒中のハザード比は1.24(95%信頼区間:0.92~1.67)、致死性脳卒中のハザード比は1.18(95%信頼区間:0.89~1.56)であり、脳卒中を増加させる可能性は否定できません。

 

※以下のように、日本糖尿病学会のSGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会から、SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationが示されています。

1.インスリンやSU 薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。インスリンとの併用は治験 で安全性が検討されていないことから特に注意が必要である。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。

2.高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヶ月間に65 歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。

3.脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。

4.発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。

5.本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、必ず副作用報告を行うこと。

6.尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問 診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーショ ンすること。

7.原則として、本剤は当面他に2剤程度までの併用が推奨される。

EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管イベントのリスクを減少させるという良い結果が得られましたが、以上のrecommendationに留意し、SGLT2阻害薬の投与に際しては、十分な注意が必要です。