投稿日:2015年10月1日|カテゴリ:医学情報

第29回 神奈川腎懇話会

 

慢性腎臓病のマネジメント~高血圧治療の重要性~

慶應義塾大学医学部医学教育統統轄センター教授 門川 俊明 先生

 

CKD Bundle=慢性腎臓病(CKD)治療におけるチェックリスト

 

My CKD Bundle(門川先生バージョン)

1.原因疾患

2.Crの変化

3.血圧

4.カリウム

5.CKD-MBD

6.酸塩基平衡異常

7.貧血

8.血糖

9.食事療法

10.体液量

11.腎代替療法への準備

 

今回の話は3,5,6,7,11について

 

<CKD-MBD>(5)

・保存期CKDにおけるCKD-MBDの病態

CKD-MBDは透析患者における血管石灰化、骨病変の要因となる重要な合併症

保存期CKDの時期より出現、保存期CKD患者の予後にも影響を及ぼす可能性がある。

・CKD患者に起こるCa、P異常(古典的な説明)

1.CKDでは腎臓からのP排泄が減少し、Pが蓄積

2.CKDではVit. Dの腎臓での活性化低下

3.低Ca血症補正のためPTH分泌

4.このようなCa, Pが持続することで骨病変が起こる。

・CKD早期におけるミネラル代謝の変化

Ca, PはGFR 20を切るくらいまであまり変化しない。PTHはもっと早い段階で上昇してくる。1,25-(OH)2Dの方が早く低下してくる。1,25-(OH)2D↓→PTH上昇

・FGF23             →2a, 2c型Na, Cl共輸送体発現↓→尿細管でのP再吸収↓→P↑

→1,25-(OH)2D↓→腸管でのP吸収↓→P↑

・CKD早期におけるFGF23の変化

CKD患者では高リン血症を防ぐために、早期からFGF23分泌↑

・FGF23分泌亢進が最初の変化

FGF23はGFR 60くらいで上昇

PTHはGFR 50くらいで上昇

・CKDにおける高Pと低Caが出現するタイミング

CJASN_7_810_2012

FGF23↑, Vit. D↑         GFR60

PTH                               GFR50

Ca↓                               GFR20

P↑                                 GFR40

(CJASN 7: 810, 2012)

・エビデンスとしては

高P血症の治療の有用性のみエビデンスあり。

保存期CKDにおけるP蓄積と生命予後とが関連。

・保存期CKDにおける血清P値は正常範囲を保つようにする(CKDガイドライン)

進行したCKDではP制限は高P血症に有効。

蛋白制限はP制限につながる。

P/蛋白比の高い食品などを避ける。

加工食品、インスタント食品などには吸収効率の高い無機Pが多く含まれているので注意が必要。

・P吸着薬(保存期)

炭酸カルシウム

炭酸ランタン

クエン酸第2鉄

・保存期CKDで高P血症にP吸着薬を使うべきか。

観察研究のみ(AJKD)

P吸着薬内服は有意に低い死亡率と関連

eGFR slopeとは関連しなかった。

・保存期CKDの高P血症はいつから治療?

高P血症が出現してから対応

高P血症が出現するのは末期の段階

・保存期CKDでP正常者にP吸着薬を使うべきか。

P吸着薬投与でP↓、FGF23→

二次性副甲状腺機能亢進症の悪化は抑制。

投与群で有意に石灰化は増加した。

・Vit. D製剤

Vit. D製剤がCKDの進展を抑制するかどうか明らかではない。少量ならOK。

 

<貧血>(7)

・保存期CKDの腎性貧血の管理

ESAによる腎性貧血の治療は、QOLを改善する可能性あり、保存期CKDに推奨

ESAによりCKDの進行やCVDの発症を抑制する可能性があるが、明らかではない。

・保存期CKDの腎性貧血の研究

CHIOIR研究

CREATE研究

TREAT研究

A21研究(日本) Hb 9-11g/dl、11-13g/dlで比較 11-13g/dlの方がわずかにいい。

・日本透析医学会(2015) 目標:11g/dl以上、13g/dl未満   治療開始Hb 11g/dl未満

腎臓学会 管理目標をはっきり明記せず。13g/dlは超えないこと

→いずれにしても、Hb 13g/dlは超えないこと

 

<酸塩基平衡異常>(6)

・アシドーシスの管理

CKD初期ではNH3産生障害によるAG正常の代謝性アシドーシス

CKD末期になる有機酸蓄積によるAG増加型の代謝型アシドーシスが加わる。

・CKDの代謝性アシドーシス

HCO3を22に維持することが推奨されている。炭酸水素ナトリウム1-6g分2-3で投与。

補正しないとCKD進展が早くなる。

 

<血圧管理>(3)

CKDにおける高血圧治療の意義

・CKD降圧目標

140/90未満

糖尿病または蛋白尿があれば、130/80未満

・糖尿病または蛋白尿があれば、RA系阻害薬を第1選択薬

・CKD患者にRA系阻害薬を投与する際の注意:30%以内の上昇は問題なし

・血圧日内変動タイプ別の24時間血圧推移:Non dipper riserは心血管イベント多い

・CKD患者では薬剤が多くなるので、服薬薬剤を少なくするという意味では降圧薬の配合薬は有用。

 

<腎代替療法への準備>(11)

血清Cr

2mg/dl 将来、透析する可能性があることを説明

10年以内(DM腎症であれば、5年以内)

5mg/dl 腎代替療法について詳しく説明

6mg/dl シャント作成

8mg/dl 透析導入

 

Take Home Message

CKD Bundleは有用である。