投稿日:2015年5月11日|カテゴリ:院長コラム

5月9日(土)は、第614回日本内科学会関東地方会に参加しました。3つの演題を拝聴しましたが、そのうち興味深かった1演題を紹介したいと思います。東京都保健医療公社豊島病院内科の先生の発表でした。

「患者さんは35歳の女性です。サバを含む生の魚を食した2日後に腹痛、吐き気を自覚されました。近医で胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬)、胃腸など内臓の痙攣性の痛みを抑える薬を処方され服用しましたが、改善しないため、同病院を受診しました。腹部X線検査で、小腸に鏡面像があり、腸閉塞が疑われました。CT検査で、多量の腹水、小腸の一部にむくみ、肥厚、それより口側の腸管の拡張を認めました。2日前にサバを摂食したこと、画像検査の所見から、小腸アニサキス症が疑われて、入院となりました。アニサキスによるアレルギー反応を考慮し、ステロイドの点滴を行い、症状は改善し、入院4日目に退院となりました。後日、アニサキス特異的IgE抗体が陽性ということが判明し、小腸アニサキス症と診断されました。」

アニサキスは寄生虫の一種で、人に感染する場合、主にサバ、アジ、イワシ、イカ、サンマなどの魚介類から感染します。アニサキスによる食中毒の症状は、胃アニサキス症では、2~8時間後に激しい腹痛、悪心、嘔吐が、腸アニサキス症では、10時間後以降に、激しい腹痛、悪心、嘔吐が出現します。また、腸管外アニサキス症といって、稀に消化管を突き破り、消化管以外の臓器に入り込んで様々な症状を引き起こすこともあります。

胃アニサキスの場合、胃カメラで虫体を取り除く方法があり、一般的に取り除くと速やかに症状が消失します。ただし、アニサキスは人間の体の中では約1週間で死んでしまうので、虫体を摘出できなくても対症療法だけで治ります。アニサキス症での激しい腹痛はアニサキスからの分泌物が原因のアレルギー症状という考えがあり、実際、抗アレルギー薬、ステロイドで症状が軽快するということが報告されています。この症例でも、ステロイドで軽快していて、手術といった侵襲的な処置を行わなくて済んだというのは非常に大きな意味がありますね。

 いずれにしても、アニサキス症にならないように予防することが一番重要だと思います。東京都福祉保健局のホームページにアニサキス症予防のポイントが書かれていたので、ご紹介いたします。

アニサキス症予防のポイント(東京都福祉保健局ホームページより改変)

  • アニサキスは加熱又は冷凍により死滅するので、中心部まで十分加熱するか、-20℃で48時間以上冷凍しましょう。
  • 内臓の生食を避けましょう。
  • 魚介類を生食する際には、より新鮮なものを選び、早期に内臓を除去し、低温(4℃以下)で保存しましょう。
  • 魚を生食用に調理する際にはアニサキスを意識して、魚をよく見て調理しましょう。特に、内臓に近い筋肉部分(ハラス)を調理する際は注意しましょう。
  • アニサキスは、傷を受けると胃や腸壁への侵入性が著しく低下するので、なめろう等を調理する際は細かく刻みましょう。またよく噛んで食べるようにしましょう。

冷凍ではなく生で流通する魚介類が増加していることから、アニサキスによる食中毒の危険が高まっているので、十分に注意していきたいですね。