投稿日:2015年1月27日|カテゴリ:院長コラム

2014年3月24日、バソプレシンV2-受容体拮抗薬であるトルバプタン(サムスカ®)が常染色体優性多発性嚢胞腎の進行を抑制する初めての治療薬として承認されました。多発性嚢胞腎では、細胞の中で情報を伝える役割をしているcAMP 活性が高くなっており、そのために嚢胞が大きくなります。トルバプタンはcAMPの活性を刺激する抗利尿ホルモンの作用をブロックするので、cAMP活性が低下し、嚢胞が増大するのを抑制し、病状の進行が緩和されます。2007年から3年間、多発性嚢胞腎の患者さんを対象とした国際共同臨床試験(TEMPO3:4試験)が行われました(N Engl J Med 367: 2407-2418, 2012)。その結果、トルバプタンは腎臓が大きくなる速度を約50%抑制し、腎機能の指標の一つである血清クレアチニン( Cr )の逆数の低下速度を約30%緩和させました。トルバプタンは多発性嚢胞腎を根治させるわけではなく、病気の進行を緩やかにする薬剤であるため、継続して服用する必要があります。服用には以下の制限があります。

①腎臓の容積(両側腎臓容積の合計)が750ml以上、かつ②1年間の腎容積増大率が概ね5%以上、の多発性嚢胞腎患者さんが適応です。

ただし以下の方は服用できません。

・本剤又は類似化合物に対し過敏症の既往歴のある患者

・口渇を感じない患者、又は水分摂取が困難な患者

・高ナトリウム血症がある患者

・腎機能が非常に悪い患者(透析患者さんを含む):eGFR <15mL/min/1.73m²

・慢性肝炎、薬剤性肝機能障害等の肝機能障害、又はその既往歴のある患者

・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(服用中は避妊が必要)

トルバプタンの服用を開始する場合は、入院して経過をみることが必要です。その後の外来においては、重篤な肝機能障害や高ナトリウム血症等を早期発見するため、少なくとも毎月の血液検査が必要です。

トルバプタンの適正使用について理解するための講習を受講した医師(登録医)のみ処方が可能です。私は2014年9月に登録医となりましたので、入院してトルバプタンを導入後の患者さんに対して、当クリニックで処方することができます。

多発性嚢胞腎が2015年1月から難病に指定されました。指定難病の医療費助成として、患者さんの自己負担割合は原則として2割です。自己負担限度額は生活保護の方を除くと、低所得から上位所得において、月2,500円から最高で3万円となっています。以前は多発性嚢胞腎でサムスカ®を服用している患者さんの治療費が非常に高額でしたが、今回の改正により、治療費の負担が減ることになり、多発性嚢胞腎の患者さんにとっては非常に朗報です。この治療により、一人でも多くの多発性嚢胞腎患者さんが末期腎不全に至らないようになることを祈っています。