投稿日:2017年4月12日|カテゴリ:院長コラム

4月11日(火)、リスクファクターフォーラムに参加して、国立循環器病研究センター生活習慣病部門病態代謝部部長の斯波真理子先生の講演を拝聴しました。講演のタイトルは「家族性高コレステロール血症治療:夢を診る」でした。

※家族性高コレステロール血症は、LDL受容体やこれに関連する遺伝子に異常があり、血液中のLDLコレステロールが細胞の中に取り込まれず、血中濃度が高くなる病気です。遺伝子は、父親に由来するものと母親に由来するものの2つが1組になっています。両方の遺伝子に異常がある場合をホモ接合体、どちらか片方に異常がある場合をヘテロ接合体と呼びます。

 

講演の内容は以下の6項目についてでした。

①家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の病態と診断

②家族性高コレステロール血症の病因となる遺伝子

③家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の治療

④小児家族性高コレステロール血症の診断と治療

⑤家族性高コレステロール血症ホモ接合体

⑥核酸医薬の開発

 

①家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の病態と診断

☆家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の特徴

 200-500人に1人

 総コレステロール値の平均値:320-350mg/dl

 皮膚黄色腫、腱黄色腫がない方が、3-4割います。

 若年性動脈硬化症を起こします。

 ※黄色腫:手の甲の腱の周囲、アキレス腱、肘や膝の皮下、膝蓋腱にできる黄色の脂肪の塊のこと。

☆家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の冠動脈疾患および脳血管疾患の発症率

 冠動脈疾患 男性:43.1%  女性:17.1%

 脳血管疾患 男性:6.9%   女性:4.8%

 脳血管障害は冠動脈疾患に比べると少ないです。

☆成人(15歳以上)家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の診断基準

 1.未治療時のLDL-Cが180mg/dL以上

 2.手背、肘、膝、アキレス腱などの腱黄色腫あるいは皮膚結節性黄色腫

 3.家族性高コレステロール血症あるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)

   ※早発性冠動脈疾患は男性55歳未満、女性65歳未満と定義されています。

☆家族性高コレステロール血症と診断しなければならない理由

 1.家族性高コレステロール血症は生下時よりLDL-Cが高値であり、動脈硬化の進行速度が異なります(速い)。

 2.家族性高コレステロール血症の治療目標がLDL-C<100mg/dLである。

 3.家族の家族性高コレステロール血症を早期に診断し、対処することができます。

☆心筋梗塞を起こした患者さんの10-15%は家族性高コレステロール血症であるため、アキレス腱肥厚の有無をチェックして、家族歴を調べることが重要です。

☆家族性高コレステロール血症の患者さんの血族は2人に1人は、その疾患に罹患しているので、血族全員を調べるカスケードスクリーニングが有用です。

 

②家族性高コレステロール血症の病因となる遺伝子

☆病院となる遺伝子の種類

・LDL受容体

・PCSK9

・アポリポ蛋白B

・ARH (LDLRAP1)

☆家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体はLDL受容体とPCSK9の変異が多いです。

☆PCSK9は機能が上昇する変異と機能が低下する変異があります。

☆PCSK9の変異よりもLDL受容体の変異の方が、未治療時のLDL-C値がより高値になり、動脈硬化性疾患を起こしやすくなります。また、PSCK9の変異とLDL受容体の変異か両方ともある場合、さらにリスクが高くなります。

 

③家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の治療

☆家族性高コレステロール血症の患者さんにおいて、累積LDL-C値と冠動脈疾患の発症とが相関することが報告されています。

☆新しい作用機序の脂質異常症治療薬:PCSK9阻害薬

 PCSK9は、proprotein convertase subtilisin/kexin type9(ヒトプロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)の略です。肝細胞の表面には血液中のLDLコレステロールを肝細胞内に取り込む働きをするLDL受容体があります。LDL受容体はPCSK9と結合して複合体となり、肝細胞内に取り込まれ、分解されてしまいます。PCSK9はLDL受容体を減少させ、LDL-Cを上昇させてしまいます。PCSK9阻害薬はPCSK9と結合し、PCSK9がLDL受容体に結合しないようにします。それによって、LDL受容体の分解を抑制し、LDL受容体を増加させ、血中のLDL-C値と低下させます。スタチンは転写因子であるSREBPを活性化させ、PCSK9を増加させてしまうため、効果が限定的ですが、PCSK9阻害薬はスタチンの欠点を補うことができるのです。

☆PCSK9阻害薬であるエボロクマブの臨床試験:FOURIER試験

 2.2年間で、主要複合評価項目(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈再建術のイベント発生)は、プラセボ群11.3%、エボロクマブ群9.8%であり、エボロクマブ群で15%の有意な減少が示されました。

☆治療目標

 LDL-C<100mg/dlを目標とします。この目標に達しない場合でも、治療前値の50%以上の低下を目標とします。PCSK9阻害薬は、スタチン最大耐用量(副作用なく投与できる薬物の最大用量)+エゼチミブでも目標に達しない場合に使用します。